クロムメッキは、 浴温によって影響を受けます。 メッキ液の加熱には石英の投げ込みヒータや熱交換器が用いられます。 クロムメッキでは、 大電流を使用しており液抵抗による発熱が起こるため、冷却機が必要になります。
メッキ時には浴温の分布が均一になるように液を緩やかに循環するが、浴に沈降した粒子が浮遊しないようにろ過機も利用します。
クロムメッキ時にはクロム酸溶液が霧状に飛散するので、メッキ槽には排気装置が必要です。クロム酸のミストの飛散は、市販のクロムめつきミスト防止剤 (パーフルオロアルキルスルホン酸などの界面活性剤)の添加によって低減できます。
硬質クロムメッキ浴
クロムメッキではクロム酸、 触媒根、 三価クロム、 不純物などの濃度管理が必要です。 浴成分はメッキ液のくみ出し、 クロムの析出、 ミスト発生によって変化するため定期的に分析する必要があります。
クロムメッキ液の簡易分析法としては、 メッキ液の比重測定によるクロム酸濃度測定、 メッキ液簡易分析装置 (サルファメータ、トリクロメータ)が現場的に用いられています。
浴中の硫酸イオンが過剰の場合には、 炭酸バリウム、 クロム酸バリウムなどを添加し硫酸バリウムとして沈殿除去します。三価クロムはカソードにおける六価クロムの還元によって生成し、アノードでの六価クロムへの酸化によって消失します。
三価クロムの生成は、メッキの電流密度が低く、触媒根濃度が高いと多くなり、アノード電流密度が高いと酸化率は低くなります。通常の鉛アノードでは、 アノードとカソードの面積比を約2とすると適正範囲に維持できます。 三価クロム濃度を減少するにはアノード面積を大きくします。
クロムメッキ浴中の不純物の影響と許容量
クロムメッキ浴中の金属不純物の許容量は、 他のメッキ浴に比べると大きく、 三価クロム濃度との和が10g/L程度までは顕著な影響は与えません。金属不純物濃度が増加すると浴電圧が上昇し、 メッキの光沢範囲が小さくなり、被覆力が低下します。金属不純物濃度としては30 g/Lが上限です。 金属不純物の除去法には、 隔膜電解法、 イオン交換樹脂法が用いられています。
アニオン不純物としては、 塩化物イオン、 硝酸イオンが問題となります。 これらの濃度が増加すると光沢範囲は著しく狭くなり、 被覆力の低下、 素地のェッチングなどが起こります。これらは、空電解により除去できます。塩化物濃度が高くなり過ぎた場合には、クロム酸銀などを添加し、塩化銀としての沈殿ろ過も有効です。
参考文献:現代めっき教本 電気鍍金研究会 編