メッキ加工法以外の表面処理法
素材表面に有機化合物を被覆する方法
*塗装(とそう)
塗装とは、塗料を金属、木材、樹脂などの表面に塗って塗膜をつくることをいいます。塗装の加工法には、吹付け塗装、静電塗装、粉体塗装、および電着塗装があります。
いずれも機械外装や一部の部品に活用されている処理方法が簡単で塗装の種類によっては被処理物の表面にいろいろな色調や特性などを与えることができます。メッキと塗装を違いは、メッキは導電性のある金属をコーティングするので基本は電気が通る。塗装は導電性のない塗料をコーティングするので、基本は電気を通さない。などが違います。見た目が金ピカで金メッキに見えても、メッキ風の塗装の場合は、導通性はありません。
電着塗装においては電気メッキと類似した設備や技術で、水系塗料の中に被処理物を浸せきし、陰極側または陽極側にして直流電解することにより、塗膜を形成させるものです。
陰極電解して電着塗装する方法をカチオン電着塗装といい、陽極電解して電着塗装する方法をアニオン電着塗装といいます。
- 有機溶剤系塗装: 塗料に有機溶剤を使用する一般的な塗装方法です。
- 水性塗装: 塗料に水を使用する環境に優しい塗装方法です。
- 粉体塗装: 粉末状の塗料を静電気によって基材に付着させ、加熱して溶融させる塗装方法です。
*ホットスタンプ法
ホットスタンプ法とは、加熱した凸版でプレスし、箔を印刷物に転写する印刷方法です。箔押出し法とも呼ばれ、カラフルでメタリック調の装飾用途に広く利用されている。ポリエステルフィルムの上に真空蒸着でアルミニウム薄膜を施し、その上に接着層を持っ複合皮膜の箔です。
この箔を被処理物に合せて重ね、加熱させ凸版を押し当てて転写皮膜形成するものです。単純形状のプラスチックスなどの被処理物ではメタリック調にしたり、印刷画像箔を簡単にスタンピングしたりすることができます。
金属素材表面を僅か溶解させ異種金属との合金や化成皮膜を形成改質する方法
この方法には、化成処理や置換メッキが該当します。硫化や酸化などの化学反応を活用して溶液中で被処理物表面に化合物皮膜を形成するものもあり、機械部品の下地処理用としてのリン酸塩皮膜処理や亜鉛置換処理または防錆処理としてのクロメート処理など最上層に施すものとがあります。
この方法は、処理条件により次の2種類に分類することができます。
1.処理液に浸せきして酸化還元反応を伴い化成皮膜が形成される無電解浸せき方法
例えば、亜鉛置換処理、3価クロム化成処理、リン酸塩処理などです。
- リン酸皮膜処理: 鉄鋼製品にリン酸塩の皮膜を形成し、塗装の密着性や耐食性を向上させます。
- クロメート処理: 亜鉛メッキやカドミウムメッキの上にクロメート皮膜を形成し、耐食性を向上させます。
2.処理液に浸せきして電解することにより化成皮膜が形成される電解処理方法
例えば、電解クロメート処理、陽極酸化処理、などです。
- アルマイト処理: アルミニウム製品に強固な酸化皮膜を形成し、耐食性、耐摩耗性、耐熱性、絶縁性などを向上させます。
- 陽極酸化: チタンやアルミニウムなど、特定の金属に電圧をかけて酸化皮膜を生成する処理です。
金属表面を酸化、炭化、窒化、あるいは硫化して表面改質する方法
浸炭、窒化、浸硫など、特定の元素をガス、塩浴などの状態から被処理物表面に含浸させて表面層を改質する方法であり、表面硬化を主目的とします。主に鉄鋼材料の表面処理に広く利用されている。しかし、メッキに比べ一般的に処理温度が高いので被処理物の寸法変化や変形問題が残ります。
素材表面に熱エネルギー照射して表面改質する方法
表面改質とは、一般焼入れや高周波焼入れなど、熱エネルギーを照射して被処理物の表面層を変質させて表面硬化など改質する方法です。通常、材料の段階で採用されます。要求される特性に応じた最適な表面処理を適用することが重要なポイントになります。
最適な表面処理とは、品質要求に対して常に安定した満足する品質の確保にあります。その点からいくつかの表面処理を複合させて安定したレベルの高い品質を作り出す必要があります。
その他の表面処理
処理法 | 主な目的 |
ブラスト処理・ホーニング処理・液体ホーニング | スケールの除去・錆の除去 |
化学エッチング・電解エッチング・乾式エッチング | 表面形状の創生 |
印刷 凸版印刷、凹版印刷、平板印刷、孔版印刷 |
表面加飾 |
研磨 機械研磨・化学研磨・電解研磨 | 平滑光沢化 |
PVDコーティング・DLCコーティング・CVDコーティング・溶射・ドライコーティング スパッタリング: ターゲット材に高エネルギーのイオンを衝突させ、発生した原子を基材に堆積させる処理です。 CVD: 気相中の物質を化学反応させて基材上に薄膜を形成する処理です。 |
表面改質・表面硬化 |
表面処理を選ぶ際のポイント
- 目的: 耐食性、耐摩耗性、耐熱性、導電性、絶縁性、外観など、どのような特性を付与したいか。
- 基材: 処理する素材の種類や形状。
- 環境: 使用される環境(温度、湿度、化学物質など)。
- コスト: 処理費用や設備投資費用。
まとめ
メッキ以外の表面処理は、その種類が多岐にわたっており、それぞれ特徴や用途が異なります。製品の要求される性能やコストなどを考慮し、最適な表面処理方法を選択することが重要です。
参考文献:めっき加工のツボとコツ 星野芳明 著