メッキ工場における安全衛生:健康と安全を守るために
はじめに
メッキ工場は、金属製品に様々な機能や美観を与える重要な役割を担っていますが、同時に、化学薬品や機械による事故や災害のリスクも伴います。従業員の健康と安全を守るために、適切な安全衛生対策を講じることが不可欠です。メッキ工場における事故や災害は化学薬品に起因するもの、機械に起因するものに大別されます。金メッキ、銀メッキでは、猛毒のシアン化合物などを使用します。メッキ作業時は、換気の確保:が重要です。金メッキ、銀メッキ加工時には有害な蒸気が発生するため、十分な換気が必要です。
メッキ加工では、多くの化学薬品や 整流器、 加熱機器、 メッキ装置などを使用するので、間違った方法で使用すると傷害や災害が起こる可能性があります。定期的な安全教育、万が一事故が生じた際の行動方法などを確認しておくなど従業員教育がとても大切です。
メッキ加工で使用する毒物・劇物・化学薬品・機械装置の取り扱い
・化学薬品類の取り扱いによる傷害には、事例:強酸などの容器を粗暴に取り扱いによる破損。容器からの薬品の取り出し、貯蔵タンクへの投入。誤投入などがあります。
・メッキ装置および付属機器、バフ研磨による機械による傷害
・電気機器による感電傷害,漏電による電気災害の予防には、加熱装置、重油バーナー装置、ガスバーナー装置、投入ヒーターなどそれぞれの使用方法、点検方法を守る、濡れ手でスイッチの開閉はをしない。モーターや電気機器はアースをとる。作業終了後は配電盤の元スイッチは必ず切るなどがあります。
・物品取扱い中の転倒などによる傷害を起こさないには、フォークリフト、コンベア、台車での運搬、パレットの移動など周囲の安全を確保して行う
その他、事故を起こさないために、
メッキ加工で使用する化学薬品の取り扱いについての安全衛生をご紹介します。
メッキ現場で使用する化学薬品類の取扱い
① メッキ加工時や薬品の取り扱い時には、保護メガネ、保護マスク、ゴム手袋、ゴム長靴、 ゴム前掛、を着用して取り扱います。②薬品の表示を確認し、暗い場所では作業しない。③毒物、劇物は使用量と 年月日を記録して 定められた倉庫に入れ、倉庫は施錠しておきます。空になった容器は,水洗後に指定された場所に置きます。 ④薬品を取り扱う場所は、水洗可能で通風のよい場所で行います。危険物を取扱う場所には消火設備を設置します。作業環境の整備整頓、作業場を清潔に保ち、乾燥状態を維持することが重要です。⑤固形物を砕くときは、厚手のビニールシートを被せて砕くとよいです。 ⑥シアン化合物は、酸と化合すると猛毒のシアン化水素を発生するので, 酸類を近付けてはいけません。シアン化合物を口から摂取したり、シアン化水素ガスを吸い込んだりすると眼、のど、上部気管を刺激し頭痛、めまい、嘔吐などが起こります。呼吸がみだれ、意識消失から死に至ることもあります。
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シアン中毒の予防法:メッキ作業には、局所排気装置、呼吸用保護具等のばく露防止措置を整えます。万一、吸入した場合は、清浄な空気のある場所に移動して呼吸しやすい姿勢をとり、直ちに医師の手当てを受けてください。
⑦濃硫酸を水で薄めるときは、多量の水の中に濃硫酸を少しずっ加えて、 時間をかけてゆっくり行う。発熱するので危険です。
⑧化学薬品類を取り扱うためには薬品の化学知識が必要であり、クロム酸の取り扱い、シアンの取り扱い、有機溶剤の取り扱い、それぞれの薬品の性質を調べてから取り扱うように心掛ける。
⑨ポンプ類、運搬具などの安全な用具を利用し、無理をしてはいけません。
⑩薬品が顔にかかったり、眼に入ったときには、素早く十分な清水で連続して5分間以上水洗します。その後すぐに医者の処置を受けます。
メッキ現場に関係する安全労働衛生の管理
・法律関係での管理 労働基準法、労働安全衛生法、特定化学物質障害予測規則、有機溶剤中毒予測規則、毒物及び劇物取締法、粉じん障害防止規則、作業環境測定法などがあります。これらを適切に運用し遵守する必要があります。
・リスクアセスメントの実施 SDSは最新のものを現場に備え付け、使用する化学物質の危険有害性をしっかり把握する。
・健康診断 一般健康診断(6か月以内ごとに1回)、特殊健康診断(6か月以内ごとに1回)、特殊歯科健康診断(6か月以内ごとに1回)
・作業環境測定 粉じん(特定粉じん作業、乾式に限る 6か月以内ごとに1回 )特定化学物質(シアン、六価クロム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなど 6か月以内ごとに1回)
・特定化学物質作業主任者の選定 指定講習を修了した者から選定 取り扱いについて監督指揮を行う
・安全衛生教育の実施 雇い入れ時、作業内容を変更したときは関連教育を実施する。
・作業環境の安全管理 有害な生産工程、作業方法の変更、有毒性の少ない原材料に変更、有害物を使用する設備の密閉、有害物の発生拡散をおさえる。有害な生産工程を隔離する。局所排気装置を設置する。全体換気装置を設置する。
上記のために安全衛生推進者、安全衛生管理者を選任し管理体制を整え、月1回安全委員会、衛生委員会を開催する。
メッキ工場に必要な救急用品
・三角巾(骨折やねん挫をした場合の固定、包帯代わりの患部の保護、出血を止める際の圧迫止血などに使えます)
・包帯、脱脂綿、ばんそうこう(擦り傷や切り傷の手当て)、ガーゼ(傷口を保護します。滅菌タイプがおすすめ)
・サージカルテープ(手当の際にガーゼや包帯をしっかり固定するために)毛筆、副木、担架、ハサミ
・消毒用アルコール、オキシドール、消毒液(マキロンなど)
・1~2%ほう酸水(結膜嚢の洗浄・消毒)
・体温計、AED(いざという時に躊躇なく使用するために、定期的にAEDの使用訓練や心臓マッサージ(胸骨圧迫)の訓練をしておくことが重要です)
参考文献: めっき読本 ・ 初級めっき 丸山清 著